閉店の段取り
閉店までにやることリスト|3ヶ月以上前から閉店後の届出まで、時系列で整理
閉店までにやることは、閉店日を決め、賃貸借契約書の解約予告期間を確かめるところから始まります。そこから逆算し、3ヶ月以上前・2ヶ月前・1ヶ月前・閉店月・閉店後の5つに分けます。時期ごとに並べると、抜け漏れと期限が一目で分かります。
先に結論
- 最初にやるのは、閉店日の決定と賃貸借契約書の解約予告期間の確認です。ほかの期限はすべてここから逆算します。
- 閉店後の届出は期限の短い順に出します。社会保険は事実発生から5日以内、雇用保険は翌日から起算して10日以内です(加入していた場合)。
- 個人事業主の廃業届は、2026年1月1日以後の廃業から「廃業した年分の確定申告期限まで」に変わりました。
閉店までにやることの全体像(時期別の一覧表)
やることは、閉店日から逆算して5つの時期に分けます。前半は契約と人への連絡、後半は役所への届出が中心です。
下の表は、小さな店に共通する項目を時期の順に並べたものです。業種や従業員の有無によって、当てはまらない行もあります。
| 時期 | やること | 期限・目安 |
|---|---|---|
| 3ヶ月以上前 | 閉店日を決める | すべての期限の起点 |
| 3ヶ月以上前 | 賃貸借契約書の解約予告期間を確認し、期限までに解約を申し入れる | 契約書の定めによる |
| 3ヶ月以上前 | リース・サブスク・掲載サイトなど、契約の棚卸し | 解約条件と違約金を一覧にする |
| 3ヶ月以上前 | 在庫・設備の処分方針を決める(居抜き・買取・廃棄) | 見積もりは複数社から |
| 3ヶ月以上前 | 従業員への伝え方と退職の段取りを準備する | 解雇の予告は少なくとも30日前(労働基準法20条) |
| 2ヶ月前 | 取引先・仕入先へ連絡する(最終発注日と支払い) | お客様への告知より先に |
| 2ヶ月前 | お客様への告知を始める | 計画室の目安は閉店の1〜2ヶ月前 |
| 2ヶ月前 | 従業員の雇用保険・離職票の段取り | 閉店後10日以内の届出に備える |
| 1ヶ月前 | 挨拶状を発送する | 閉店の1ヶ月前までに届くように |
| 1ヶ月前 | 電気・ガス・水道・通信の停止日を指定する | 閉店日か明け渡し日に合わせる |
| 1ヶ月前 | 最終営業日の計画を立てる | 営業時間と在庫の売り切り方を決める |
| 閉店月 | 最終営業、原状回復、明け渡し | 原状回復の範囲は契約書で確認 |
| 閉店後 | 役所への届出(下の表) | 5日以内・10日以内・1か月以内など |
この表を、あなたの店の日付に置き換える
6つの質問に答えると、閉店月から逆算して「何年何月に何をやるか」が入った工程表になります。業種・従業員の有無・賃貸かどうかに合わせて、要らない行は自動で外れます。無料・登録不要・入力内容は送信されません。
無料で工程表をつくる3ヶ月以上前:閉店日を決め、解約予告の期限を確かめる
この時期にやるのは、閉店日の決定と、契約・モノ・人の棚卸しです。あとの工程は、ここで決めた日付から逆算します。
閉店日を決める
閉店日は、ほかのすべての期限の起点です。計画室では、月末を閉店日にする形をすすめています。月ごとの家賃や給与の締めと、区切りを合わせやすいためです。
賃貸借契約書の「解約」の条項を読む
店舗を借りている場合、最初に読むのは賃貸借契約書の解約の条項です。何ヶ月前までに、どの方法で伝えるかが書かれています。
この予告期間は、税務署や年金事務所の届出のような役所の期限ではありません。貸主との契約で決まるため、店ごとに違います。予告期間の数え方と、原状回復の範囲も同じ時期に読んでおきます。居抜きで設備を次の借り手に譲りたい場合は、その相談も貸主・管理会社へ早めに持ちかけます。
契約・在庫・設備を棚卸しする
店に関わる契約を、まず全部書き出します。電気・ガス・水道、電話やネット回線、リース、決済サービス、保険、グルメサイトの掲載などです。書き出したら、解約の連絡期限が早い順に並べ替えます。
リース品は、処分や売却の前にリース会社へ連絡します。在庫と設備は、売る・買い取ってもらう・譲る・廃棄するのどれにするかを決め、見積もりは複数社から取ります。銀行口座と決済サービスは、閉店後の入金や返金が終わるまで残し、解約は最後に回します。
見落としやすい契約の一覧と記入式の棚卸しシートは、有料の店じまい完全キットに収録しています。
従業員への伝え方を準備する
従業員がいる場合は、伝える日と伝え方をこの時期に決めます。伝える順番は、スタッフが最初です。お客様や取引先から先に広まると、スタッフが人づてに職場の閉店を知ることになります。
解雇の予告は、労働基準法20条で少なくとも30日前と定められています。予告した日は数えず、翌日から暦日で30日を数えます。予告が30日に満たない場合は、足りない日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払います。
法人の場合は専門家への相談を始める
法人で会社そのものをたたむ場合は、解散と清算の登記が加わります。登記と清算中の税務は司法書士・税理士の領域なので、この時期に相談を始めます。個人事業の開業・廃業等届出書と青色申告の取りやめ届出書は、個人事業主の手続きです。
2ヶ月前:取引先とお客様に伝えはじめる
2ヶ月前は、社外に閉店を伝える時期です。順番は、スタッフ、取引先・大家、お客様の順にします。
仕入先には、最終発注日と支払いの予定をあわせて伝えます。すでに発注した分の扱いも、この連絡で確かめます。長く付き合った取引先には、挨拶状も用意します。
お客様への告知は、計画室では閉店の1〜2ヶ月前を目安にしています。店頭の貼り紙、SNS、口頭を組み合わせ、最終営業日をはっきり書きます。前売り券・回数券・ポイントがある店は、使える期限と払い戻しの方法も告知に入れます。告知の順番と例文は閉店の告知はいつから?順番と挨拶文の例文にまとめています。
従業員がいる場合は、ハローワークへの届出の準備も始めます。雇用保険の被保険者資格喪失届には、離職証明書を添えて出します。離職証明書には賃金台帳や出勤簿の確認資料が要るため、書類を今のうちにそろえておきます。
1ヶ月前〜閉店月:止める日を決めて、最終営業日を迎える
1ヶ月前からは、止める・返す・片付ける段階です。閉店月は、最終営業のあとに原状回復と明け渡しまでを終えます。
挨拶状は、閉店の1ヶ月前までに届くように送ります。電気・ガス・水道・電話・ネットは、停止日を指定して申し込みます。原状回復の工事で電気や水道を使う場合は、工事が終わる日を停止日にします。
届出で原本を返す書類がある業種は、置き場所をこの時期に確かめます。飲食店の営業許可書は、廃業届に添えて提出する自治体と、手元で破棄する自治体があります。詳しくは飲食店の閉店手続き(保健所・消防・警察の届出)と美容室の閉店手続き(美容所の廃止届)で扱っています。
閉店月に入ったら、原状回復の工事と明け渡しの日を決めます。工事の見積もりは、契約書の原状回復の範囲をもとに複数社から取ります。明け渡しの立ち会いでは、原状回復の仕上がりと敷金の精算方法を確かめます。
閉店後:届出は期限の短い順に出す
閉店後の届出は、期限の短いものから順に出します。いちばん短いのは、健康保険・厚生年金保険の適用事業所だった場合の5日以内です。
下の表は、閉店後に出す主な届出を期限の短い順に並べたものです。「該当する店」に当てはまらない行は、飛ばして構いません。
| 手続き | 提出先 | 期限 | 該当する店 |
|---|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届/被保険者資格喪失届 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 | 事実発生から5日以内 | 健康保険・厚生年金保険の適用事業所 |
| 雇用保険 適用事業所廃止届/被保険者資格喪失届(離職証明書を添える) | 事業所を管轄するハローワーク | 廃止した日の翌日から起算して10日以内 | 雇用保険の適用事業所 |
| 飲食店営業の廃業届(営業許可書の扱いは保健所の案内による) | 管轄の保健所 | 保健所の案内による(世田谷区・港区は10日以内) | 飲食店 |
| 個人事業税の事業廃止の申告 | 都道府県税事務所(東京都は都税事務所) | 都道府県の定めによる(東京都は申告書が10日以内、事業税の申告が1か月以内) | 個人事業主 |
| 給与支払事務所等の廃止届出書 | 所轄の税務署 | 廃止の事実があった日から1か月以内 | 給与を支払っていた事業者 |
| 給与所得者異動届出書 | 住民税を特別徴収していた市区町村 | 市区町村の案内による(大阪市は異動した月の翌月10日まで) | 従業員の住民税を給与から天引きしていた店 |
| 労働保険 確定保険料申告書 | 都道府県労働局・労働基準監督署・金融機関(事業の区分による) | 事業を廃止した日の翌日から起算して50日以内 | 労働保険に加入していた事業所 |
| 美容所・理容所の廃止届 | 管轄の保健所 | すみやかに | 美容室・理容室 |
| 消費税の事業廃止届出書 | 納税地を所轄する税務署 | 速やかに | 消費税の課税事業者 |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 所轄の税務署 | 廃業した年分の確定申告期限まで | 個人事業主 |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 所轄の税務署 | 青色申告を取りやめようとする年の確定申告期限 | 青色申告をしていた個人事業主 |
| 廃業した年分の所得税の確定申告 | 所轄の税務署 | 原則、翌年2月16日〜3月15日 | 個人事業主 |
注意
保健所・都道府県税・住民税の期限は、自治体ごとに案内が異なります。表の例は東京都・世田谷区・港区・大阪市の案内です。提出前に、管轄の窓口で期限と必要書類を確認してください。
表のほかに、業態によって必要になる届出があります。深夜に酒類を提供する営業の届出をしている店は、公安委員会へ廃止の届出書を出します(風営法33条2項。様式は警視庁などの都道府県警察が公開しています)。防火管理者を選任している店は、解任したことを消防署へ遅滞なく届け出ます(消防法8条2項)。
従業員に関わる手続きも残ります。退職した従業員には、退職の日以後1か月以内に源泉徴収票を交付します(所得税法226条)。労働保険は、納めた概算保険料が確定保険料より多ければ、労働保険料還付請求書で還付を請求します。
社会保険の全喪届には、事業の廃止を確認できる書類の写しを添えます。日本年金機構は、雇用保険適用事業所廃止届の写しなどを挙げ、用意できない場合の代わりの書類も案内しています。消費税の課税事業者だった場合は、廃業した日の属する課税期間の消費税の申告も必要です。
取り違えやすい期限:2026年の変更と「5日・10日」
閉店の段取りで取り違えやすい期限は3つあります。廃業届の新しい期限、社会保険と雇用保険の日数、自治体ごとに違う期限です。
廃業届は「1か月以内」ではなくなった
個人事業の開業・廃業等届出書の期限は、所得税法の改正(令和5年法律第3号)で変わりました。2026年1月1日以後の廃業は、廃業した年分の確定申告期限までに出します。期限が土・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限です。
改正前は「廃業の事実があった日から1か月以内」でした。2025年12月31日以前の廃業には、改正前の期限がそのまま適用されます(改正法附則10条)。閉店手続きの解説記事には、改正前の「1か月以内」で書かれたものもあります。現在の期限は、国税庁の手続案内(A1-5)で確かめられます。
同じ改正で、給与を支払っていた個人事業主の扱いも変わりました。改正前は、廃業届を出す場合は給与支払事務所等の廃止届出書が不要でした。2026年1月1日以後の廃止からは、廃業届とは別に1か月以内に出します。詳しくは個人事業主の廃業届(2026年から期限が変わった)で解説しています。
社会保険は「5日以内」、雇用保険は「翌日から10日以内」
社会保険(健康保険・厚生年金保険)と雇用保険は、提出先も期限も別です。日本年金機構は全喪届と資格喪失届を「事実発生から5日以内」としています。ハローワークの廃止届は「廃止した日の翌日から起算して10日以内」です。
両方を「5日以内」や「10日以内」でひとまとめに覚えると、どちらかの期限を外します。閉店日をカレンダーに書き、社会保険と雇用保険の期限を別々に書き込んでおきます。
保健所と都道府県税の期限は、自治体ごとに違う
飲食店の廃業届について、世田谷区の保健所は「原則10日以内」と案内しています。港区のみなと保健所は「営業が終了してから10日間以内」です。個人事業税の事業廃止の申告書は、東京都では廃止の日から10日以内です。
ほかの地域では、期限や必要書類が異なる場合があります。管轄の保健所と都道府県税事務所の案内を、閉店の前に一度見ておきます。
期限の短い届出を、工程表で先回りする
従業員の有無と業種を選ぶと、閉店後に出す届出だけが期限つきで並びます。印刷して、終わったものから線で消していけます。無料・登録不要・入力内容は送信されません。
無料で工程表をつくるよくある質問
閉店を決めた店主からよく出る疑問に、短く答えます。
閉店の準備は、いつから始めればいいですか?
計画室では、閉店日の3ヶ月以上前を目安にしています。店舗を借りている場合は、先に賃貸借契約書の解約予告期間を確認します。予告期間が3ヶ月より長い契約なら、その期間に合わせて動き出しを早めます。
廃業届は、閉店から1か月以内に出さないといけませんか?
2026年1月1日以後の廃業なら、期限は廃業した年分の所得税の確定申告期限までです。2025年12月31日以前の廃業には、改正前の「1か月以内」が適用されます。
閉店後の届出で、いちばん期限が短いのはどれですか?
健康保険・厚生年金保険の適用事業所だった場合の、適用事業所全喪届と被保険者資格喪失届です。期限は事実発生から5日以内で、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です。
お客様への閉店の告知は、いつ出せばいいですか?
計画室では、閉店の1〜2ヶ月前を目安にしています。その前に、スタッフと取引先・大家へ伝え終えておきます。
まとめ
閉店までにやることは、閉店日と解約予告期間の確認に始まり、閉店後の届出で終わります。期限の短い届出から順に片付ければ、段取りはひとりでも進められます。
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無料で工程表をつくる 挨拶文例12種・契約棚卸しシートつきの「店じまい完全キット」を見る →出典(一次情報・2026年9月13日確認)
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 国税庁「廃業する場合」
- 国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
- 国税庁「D1-14 事業廃止届出手続」
- 国税庁「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」
- 国税庁「No.2020 確定申告」
- e-Gov法令検索「所得税法」(第226条・第229条・第230条、令和5年法律第3号附則)
- 日本年金機構「適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き」
- 日本年金機構「従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き」
- 徳島労働局「事業所に関する手続き」
- 大阪労働局 ハローワーク梅田「従業員の雇用保険の主な手続き」
- 兵庫労働局「事業(労働者の雇用)を終了したとき」
- 厚生労働省「確かめよう労働条件 Q&A:解雇予告の期間&手当の計算方法と支払時期」
- e-Gov法令検索「労働基準法」(第20条)
- 東京都主税局「事業を始めたとき・廃止したとき」
- 東京都主税局「個人事業税」
- 世田谷区「食品関係営業施設の廃業届」
- 港区「食品営業施設を廃業します。その場合の手続きを教えてください。」
- 港区「理容所・美容所の手続きについて」
- e-Gov法令検索「美容師法」(第11条)/「理容師法」(第11条)
- e-Gov法令検索「消防法」(第8条)
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(第33条)
- e-Gov法令検索「会社法」(第926条・第929条)
- 警視庁「廃止届出書(様式一覧)」
- 大阪市「退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)」
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