業種別の閉店手続き
飲食店の閉店手続き一覧|保健所・消防・警察・税務署へ、何をいつまでに出すか
飲食店の閉店手続きは、保健所への廃業届が軸です。そこに店の営業形態に応じて、消防署・警察署・税務署への届出が加わります。このページでは、提出先ごとに「何を・いつまでに・どの店が」出すかを一覧にしました。
先に結論
- 保健所への廃業届は、飲食店営業許可を受けていたすべての店が対象です。期限は国の法令になく、自治体ごとに違います(台東区・港区は10日以内、横浜市は速やかに)。
- 消防署と警察署は条件つきです。防火管理者を選任していた店は解任届を、深夜0時以降に酒類を出す届出をしていた店は廃止の日から10日以内に廃止届を出します。
- 酒類販売業免許の取消申請は、持ち帰り販売などで免許を受けていた店だけです。店内で飲んでもらうだけなら、販売業免許はそもそも不要です。
飲食店の閉店手続き一覧(提出先・期限・対象)
店舗の閉店手続きのうち、飲食店に固有の届出と、閉店直後に期限が来る主な届出を下の表にまとめました。「対象」の欄に条件がある手続きは、当てはまる店だけが出します。
| 手続き | 提出先 | 期限 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業の廃業届(営業許可書の返納・破棄は自治体の指示に従う) | 店の所在地を管轄する保健所 | 国の法令に日数の定めなし。自治体の案内による(例:台東区・港区は10日以内、横浜市は速やかに) | 飲食店営業許可を受けていたすべての店 |
| 防火管理者の解任届(東京消防庁の様式名は「防火・防災管理者選任(解任)届出書」) | 所轄の消防署 | 遅滞なく | 防火管理者を選任して届け出ていた店 |
| 深夜における酒類提供飲食店営業の廃止届出書(別記様式第18号) | 営業所を管轄する警察署(生活安全課) | 廃止の日から10日以内 | 深夜(0時〜6時)に酒類を提供する営業の届出をしていた店 |
| 風俗営業の許可証の返納 | 公安委員会(窓口は管轄の警察署に確認) | 遅滞なく | 客の接待をして飲食させる営業などで、風俗営業の許可を受けていた店 |
| 酒類販売業免許の取消申請 | 販売場を所轄する税務署 | 販売業を廃止する前 | 持ち帰り用の酒の販売などで、酒類販売業免許を受けていた店 |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 廃業した年分の確定申告期限まで(2026年1月1日以後の廃業) | 個人事業主 |
| 健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 | 事実発生から5日以内 | 社会保険に加入していた店 |
| 雇用保険 適用事業所廃止届 | 管轄のハローワーク(公共職業安定所) | 廃止の日の翌日から10日以内 | 雇用保険に加入していた店 |
期限が短いのは、社会保険の5日と、雇用保険・深夜酒類提供の10日です。保健所も、台東区や港区のように10日以内とする自治体があります。閉店日の前に書類をそろえておくと、閉店後に慌てずに済みます。
保健所:廃業届と営業許可書(期限は自治体ごと)
飲食店営業許可を受けていた店は、管轄の保健所に廃業届を出します。期限は国の法令に定めがなく、自治体の案内に従います。
根拠は食品衛生法施行規則71条の2です。廃業したら、届出者の氏名、施設の住所と屋号、廃業年月日、許可番号などを書いた届出書を出す、と定めています。この条文に「何日以内」という日数はありません。
日数と営業許可書の扱いは、自治体ごとに違います。店じまい計画室が各自治体の公式ページで確認した実例は、次のとおりです。
| 自治体 | 期限 | 営業許可書の扱い |
|---|---|---|
| 東京都台東区 | 廃業した日から10日以内 | 窓口で提出(返却不可)。廃業届は郵送でも手続きできる |
| 東京都港区 | 営業が終了してから10日間以内 | 許可を取得した施設は営業許可書を提出。営業届出の施設は廃業届のみ |
| 横浜市 | 速やかに | 許可施設は営業許可証を添付。手元にある場合は受付完了通知の後に速やかに破棄 |
同じ「廃業届」でも、日数も許可書を返すか捨てるかも揃っていません。お店の所在地の保健所のページで、この2点を確かめてください。
オンラインで出せる場合もあります。厚生労働省の「食品衛生申請等システム」は、営業許可・届出の手続きを廃業も含めてオンラインで扱う仕組みです。ただし川崎市は、このシステムで申請などをした施設に限る、としています。
店ごと人に引き継ぐなら、流れが変わります。営業を譲渡した場合は、譲り受けた人が許可営業者の地位を承継し、遅滞なく届け出ます(食品衛生法56条)。引き継ぐ相手がいるときは、廃業届を出す前に保健所へ相談します。
保健所に電話で確かめるときは、次の3点を聞くと一度で済みます。
消防署:防火管理者を選任していた店は解任届
防火管理者を選任して消防署に届け出ていた店は、閉店で解任したら、その旨を届け出ます。期限は「遅滞なく」です。
消防法8条2項は、防火管理者を定めたら所轄の消防長または消防署長に届け出るよう求めています。解任についても「これを解任したときも、同様とする」と定めています。東京消防庁では「防火・防災管理者選任(解任)届出書」を使い、窓口・郵送・電子申請で出せます。
選任の義務があったかどうかは、建物の用途と収容人員で決まります。東京消防庁の案内では、飲食店などの特定用途がある建物が対象です。建物全体の収容人員が30人以上なら、防火管理者が必要になります(消防法施行令1条の2第3項)。
テナントとして入っている店も対象になりえます。東京消防庁は、防火管理者が必要な建物では、建物所有者とすべてのテナントで選任が必要、としています。席数の少ない店でも、ビル全体で30人以上なら選任の対象です。開店時に出した選任届の控えを探し、あれば解任届を出します。
警察署:深夜に酒類を出していた店は10日以内に廃止届
深夜における酒類提供飲食店営業の届出をしていた店は、廃止の日から10日以内に廃止届出書を出します。提出先は、営業所を管轄する警察署です。
対象は、バーや酒場など客に酒類を提供する営業を、深夜に営んでいた店です。風営法は、深夜を「午前零時から午前六時までの時間」と定めています(13条)。営業の常態として通常主食と認められる食事を提供している店は、この営業の定義から除かれます(2条13項4号)。
期限は、風営法施行規則104条が準用する42条2項により、廃止の日から10日以内です。様式は別記様式第18号の廃止届出書で、警視庁や岐阜県警察のページから入手できます。窓口は、営業所を管轄する警察署の生活安全課です(神奈川県警察・岐阜県警察の案内)。
風俗営業の許可を受けていた店
客の接待をして飲食させる営業(風営法2条1項1号)で風俗営業の許可を受けていた店は、深夜酒類の届出とは別の手続きです。営業を廃止したら、遅滞なく許可証を公安委員会に返納します(同法10条)。窓口は管轄の警察署に確認してください。
税務署・年金事務所・ハローワークの手続き
税務署への届出は、酒類販売業免許の有無と、個人事業かどうかで変わります。従業員がいた店は、年金事務所とハローワークの手続きが閉店の直後に来ます。
まず、お酒の免許です。酒税法9条1項は、酒類の販売業に免許を求めています。ただし書で「酒場、料理店その他酒類をもつぱら自己の営業場において飲用に供する業」は除かれます。店内で飲んでもらうだけなら、販売業免許は不要です。
持ち帰り用の酒を売る免許を受けていた店は、販売業を廃止する前に取消申請をします。提出先は販売場を所轄する税務署です(国税庁 E1-7)。閉店日が決まった段階で、早めに税務署へ連絡します。
個人事業主は、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を出します。2026年1月1日以後の廃業から、期限は「廃業した年分の確定申告期限まで」に変わりました。青色申告の取りやめなど、あわせて出す書類は個人事業主の廃業届のページにまとめています。法人の場合は、解散・清算の手続きを司法書士・税理士に相談してください。
従業員がいた店は、閉店前後に労務の手続きが続きます。解雇は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を支払います(労働基準法20条)。閉店後は、社会保険の全喪届が事実発生から5日以内、雇用保険の適用事業所廃止届が廃止の日の翌日から10日以内です。
従業員への伝え方や、閉店日から逆算した順番は閉店までにやることリストで整理しています。
厨房設備・居抜き・原状回復・リースの段取り
設備の行き先は、原状回復の範囲とリース契約を確かめてから決めます。業務用の冷蔵庫や製氷機は、捨てる前にフロン回収の手配が要ります。
| 設備・内装 | 先に確かめること |
|---|---|
| リース中の厨房機器・POSレジ | 所有者はリース会社。売却・廃棄の前にリース会社へ連絡し、中途解約の条件を確認 |
| 業務用冷蔵庫・冷凍庫・ショーケース・製氷機・ビールサーバー・業務用エアコン | フロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡す手配 |
| 内装・造作・ダクトなど | 賃貸借契約の原状回復条項と解約予告の期間。設備を残すなら貸主の了承 |
| 自分で所有する厨房機器・食器 | 買取・譲渡・廃棄の見積もり |
原状回復。民法621条は、借りた後に生じた損傷を、賃貸借の終了時に元に戻す義務を定めています。通常の使用による損耗と経年変化は、この条文では除かれます。店舗の契約では戻す範囲を特約で決めていることがあるため、契約書の原状回復条項を先に読みます。
居抜き。原状回復は貸主に対する義務です。内装や設備を残して出る居抜きは、貸主の了承があって成り立ちます。次の借り手に造作を譲る場合も、貸主・次の借り手・自分の三者で条件をそろえてから進めます。
リース。リース事業協会の契約条項例では、物件の所有権はリース会社にあり、契約に定める場合を除き解除できません。中途解約するときは、残期間のリース料またはそれに相当する違約金を一括で払うよう契約で定めている、と同協会は説明しています。リース品は居抜きの売却対象に含めないでください。
フロン回収。業務用の冷蔵・冷凍機器やエアコンは、フロン排出抑制法の「第一種特定製品」です。廃棄するときは、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者に引き渡します。回収依頼書などの写しと引取証明書は、3年間保存します。
業務用かどうかは、使い方ではなく「業務用として製造・販売されたか」で決まります。機器の銘板やシールで確認でき、平成14年4月以降に販売された機器には表示義務があります。家庭用として販売された冷蔵庫やエアコンは、家電リサイクル法の対象です。
よくある質問
条件つきで迷いやすい手続きを中心に、4つの問いに一次情報に沿って答えます。
保健所の廃業届は、閉店から何日以内に出せばいいですか?
国の法令(食品衛生法施行規則71条の2)に日数の定めはありません。期限は自治体が案内しており、台東区と港区は10日以内、横浜市は速やかに、としています。管轄の保健所で確認してください。
夜遅くまで営業する居酒屋でした。警察署への届出は必要ですか?
深夜0時から6時の間に酒類を提供する営業の届出をしていた店が対象です。廃止の日から10日以内に、管轄の警察署へ廃止届出書を出します。営業の常態として通常主食と認められる食事を提供していた店は、この届出の対象外です。
店でお酒を出していました。酒類販売業免許の取消申請は必要ですか?
店内で飲んでもらうための提供だけなら、販売業免許はそもそも不要です(酒税法9条1項ただし書)。持ち帰り用の販売などで免許を受けていた場合に、販売業をやめる前に税務署へ取消申請をします。
厨房の業務用冷蔵庫は、そのまま処分できますか?
業務用として製造・販売された冷蔵庫・製氷機・ビールサーバーなどが対象です。廃棄の際は、フロン類を第一種フロン類充塡回収業者へ引き渡す義務があります。リース中の機器は、所有者であるリース会社に先に連絡してください。
まとめ
飲食店の閉店でやることのうち、役所の手続きは保健所の廃業届が軸です。店の条件で消防署・警察署・税務署が加わります。期限と許可書の扱いは管轄の保健所に確かめ、閉店日の前に書類をそろえておきます。
お客様や取引先への伝え方は閉店の告知と挨拶文のページにまとめています。自分の店に何が当てはまるかは、下の無料工程表で一覧にできます。
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- e-Gov法令検索「食品衛生法施行規則」第71条の2
- e-Gov法令検索「食品衛生法」第56条
- 台東区「【廃業届】食品営業許可・届出の廃業手続きについて」
- 港区「食品営業施設を廃業します。その場合の手続きを教えてください。」
- 横浜市「食品関係営業をやめたとき(廃業)の届出」
- 川崎市「食品衛生申請等システム(厚生労働省運用のオンライン申請システム)について」
- 厚生労働省 資料「食品衛生申請等システムについて」(PDF)
- e-Gov法令検索「消防法」第8条
- e-Gov法令検索「消防法施行令」第1条の2
- 東京消防庁「防火管理者が必要な防火対象物と資格」
- 東京消防庁「防火・防災管理者選任(解任)届出書」
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」第2条・第10条・第13条・第33条
- e-Gov法令検索「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則」第42条・第104条
- 警視庁「廃止届出書(様式一覧)」
- 岐阜県警察「深夜酒類提供飲食店営業の廃止の届出」
- 神奈川県警察「風俗営業等の規制概要と営業申請(届出)手続」
- e-Gov法令検索「酒税法」第9条
- 国税庁「E1-7 酒類等の製造又は酒類販売(販売の代理・媒介)業を廃止しようとするときの免許取消申請」
- 国税庁 タックスアンサー No.2090
- 日本年金機構「適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き」
- e-Gov法令検索「雇用保険法施行規則」第141条
- e-Gov法令検索「労働基準法」第20条
- e-Gov法令検索「民法」第621条
- 公益社団法人リース事業協会「リース契約の特徴」
- 公益社団法人リース事業協会「リース契約書の主な条項」
- 環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイト「機器の廃棄」
- 環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイト「FAQ」
本ページは一般的な手続きの情報提供であり、法的・税務的助言ではありません。期限や要否は個別の状況・自治体・契約内容で異なります。個別の判断は税理士・社会保険労務士・司法書士等の専門家、または各窓口にご確認ください。