税務署の手続き
個人事業主の廃業届は「確定申告期限まで」に|2026年改正後の期限・書き方・出し方
店を閉めた個人事業主の廃業届は、2026年1月1日以後に廃業した場合、廃業した年分の確定申告期限までに税務署へ出します。2026年中の廃業なら、期限は2027年3月15日(月)です。「廃業から1か月以内」は、2025年12月31日以前の廃業に適用される旧ルールです。
先に結論
- 2026年1月1日以後の廃業は、廃業届の期限が「廃業した年分の確定申告期限」まで。2026年中の廃業なら2027年3月15日(月)。
- 2025年12月31日以前の廃業は、旧ルールの「廃業日から1か月以内」のまま。
- 従業員などに給与を払っていた人は、2026年1月1日以後の廃止から「給与支払事務所等の廃止届出書」も別に必要(1か月以内)。
廃業届の期限は「廃業した年分の確定申告期限」まで
2026年1月1日以後の廃業なら、廃業届の期限は廃業した年分の確定申告期限です。旧ルールの「1か月以内」は、2025年12月31日以前の廃業にだけ残っています。
廃業届の正式名は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。期限を定めているのは所得税法229条で、2023年成立の「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)により改正されました。
改正前の条文は「その事実があつた日から一月以内」でした。改正後は「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」です。この改正は2026年1月1日に施行されています。
どちらのルールになるかは、廃業した日で決まります。改正法の附則第10条は、2026年1月1日以後に生じた事実に新しい規定を適用し、同日前に生じた事実は「なお従前の例による」と定めています。
| 廃業した日 | 適用されるルール | 廃業届の期限 |
|---|---|---|
| 2025年12月31日以前 | 改正前の229条(旧ルール) | 廃業日から1か月以内 |
| 2026年1月1日〜12月31日 | 現行の229条(新ルール) | 2026年分の確定申告期限=2027年3月15日(月) |
| 2027年1月1日以後 | 現行の229条(新ルール) | 廃業した年分の確定申告期限(翌年3月15日) |
旧ルールのままの解説に注意
2026年に更新された解説記事にも「廃業日から1か月以内」と書かれたものが残っています。国税庁の手続案内(A1-5)は現在、「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」と案内しています。期限の日が土・日曜日・祝日等にあたるときは、その翌日が期限です。
期限が延びても、廃業届は廃業した後ならいつでも出せます。閉店直後の手続きと一緒に出しておくと、翌年の確定申告まで持ち越さずに済みます。
2025年12月31日以前に廃業してまだ出していない場合、旧ルールの期限はすでに過ぎています。所轄の税務署に相談のうえ、早めに提出してください。
廃業したら出す書類の一覧(提出先・期限・対象者)
税務署に出す廃業届は、廃業した個人事業主の全員が対象です。ほかの書類は、青色申告・従業員・消費税・事業の所得の状況によって要否が決まります。
| 書類名 | 提出先 | 期限 | 対象者 |
|---|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業届) | 納税地を所轄する税務署 | 廃業した年分の確定申告期限(2026年1月1日以後の廃業) | 事業を廃止した個人事業主 |
| 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書 | 給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署 | 廃止の日から1か月以内 | 給与の支払事務を扱う事務所等を廃止した人(2026年1月1日以後の廃止は廃業届とは別に必要) |
| 所得税の青色申告の取りやめ届出書 | 納税地を所轄する税務署 | 青色申告を取りやめようとする年分の確定申告期限 | 青色申告の承認を受けていて、青色申告をやめる人 |
| 事業廃止届出書(消費税) | 納税地を所轄する税務署 | 速やかに | 消費税の課税事業者(インボイス発行事業者を含む)で、ほかに課税売上げにあたる所得がない人 |
| 事業開始(廃止)等申告書 | 都道府県の税事務所(東京都は都税事務所) | 都道府県の条例による(東京都は廃止の日から10日以内) | 都道府県の定めによる(東京都は都内で行っていた事業を廃止した人) |
| 個人事業税の申告 | 店のある都道府県 | 廃止の日から1か月以内(死亡による廃止は4か月以内) | 事業の所得が控除額を超える個人事業税の納税義務者 |
| 所得税の確定申告 | 納税地を所轄する税務署 | 翌年3月15日(2026年中の廃業は2027年3月15日) | 廃業した年分の所得税の申告が必要な人 |
| 消費税の確定申告 | 納税地を所轄する税務署 | 翌年3月31日(2026年中の廃業は2027年3月31日) | 消費税の課税事業者 |
表の書類はすべて税金の手続きです。保健所・消防・社会保険・雇用保険の届出は別にあります。飲食店は飲食店の閉店手続き、美容室は美容室の閉店手続き、閉店までの順番は閉店までにやることリストにまとめています。
廃業届の書き方(様式の欄ごと)
様式は国税庁の「個人事業の開業・廃業等届出書」1枚で、開業と同じ用紙を使います。廃業では「届出の区分」の廃業欄に「1」を書き、廃業日と所得の種類を埋めるのが中心です。
様式と「書き方」は、国税庁の手続案内(A1-5)からPDFで入手できます。下の表は、様式の欄と国税庁の「書き方」に書かれている内容を、廃業の場面に絞って整理したものです。
| 欄 | 廃業のときに書くこと |
|---|---|
| 提出先・提出日 | 納税地を所轄する税務署名と、提出する日付 |
| 納税地・区分 | 納税地と、その納税地が住所地・居所地・事業所等のどれかを番号(5・6・7)で記入 |
| 氏名・生年月日・個人番号・職業・屋号 | 本人の情報。個人番号(12桁)の記載が必要 |
| 届出の区分 | 「廃業」の欄に「1」を記入。事業を引き継いだ(譲渡した)場合は、引き継いだ先の住所・氏名も記入 |
| 所得の種類 | 廃止した事業の所得の種類にレ印。2つ以上の事業のうち全部をやめるなら「全部」、一部なら「一部」にレ印をつけ、やめる事業を括弧内に簡記 |
| 開業・廃業等日 | 廃業した日 |
| 事業所等を新増設、移転、廃止した場合 | 事務所・事業所を廃止したときの欄で、「廃止前の所在地」を記入 |
| 廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合 | 法人成りのときだけ。設立法人名・代表者名・法人納税地・設立登記の日 |
| 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 | 「青色申告の取りやめ届出書」と、消費税の「事業廃止届出書」を出すかどうかを、有・無で選択 |
| 事業の概要 | やめる事業の内容を、できるだけ具体的に |
| 給与等の支払の状況 | 届出日現在の給与の支給人員と支払の状況。給与の支払事務を行う事務所等を廃止した場合は、「その他参考事項」欄に支払事務を引き継いだ先の事務所等の所在地を記入 |
書面で出すときは、個人番号の記載と本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。手元に控えを残すなら、控えには個人番号を書かないよう国税庁が注意を促しています。
記入の判断に迷う欄は、所轄の税務署で確認できます。事業の引継ぎや法人成りが絡む場合は、税理士への相談が確実です。
提出方法は窓口・郵送・e-Taxの3つ
廃業届は、税務署の窓口に持参する、郵送する、e-Taxで送信する、のいずれかで出します。提出先は、住所地など納税地を所轄する税務署です。
店の所在地が納税地と別の税務署の管轄でも、出すのは納税地を所轄する税務署だけです。国税庁は、それ以外の税務署長への提出は不要と案内しています。
窓口に持参する
税務署の開庁時間は8時30分から17時までです。土・日曜日・祝日等の閉庁日は受付をしていませんが、時間外収受箱への投函で提出できます。窓口では、マイナンバーカードなどの本人確認書類を提示します。
郵送する
書面は郵送(送付)でも出せます。送り先は納税地を所轄する税務署で、本人確認書類の写しを同封します。
2025年1月から、税務署は申告書等の控えに収受日付印を押していません。送るのは正本(提出用)だけです。提出した日の記録がほしい場合は、切手を貼った返信用封筒を同封します。当分の間の対応として、受け付けた日付と税務署名を記したリーフレットが返送されます。
e-Taxで送信する
e-Taxでは、パソコンのe-Taxソフトで届出書を作成して送信します。初めて使う人は、利用者識別番号の取得が必要です。e-Taxで出す場合、本人確認書類の提示や写しの添付は要りません。
送信後は、メッセージボックスに受信通知が届き、受付番号や受付日時を確認できます。個人が受信通知の内容を見るには、マイナンバーカード等の電子証明書が必要です。
あわせて出す書類:給与支払事務所・青色申告・消費税・個人事業税
廃業届のほかに出す書類は、給与・青色申告・消費税・事業の所得の状況で決まります。期限が早いのは給与支払事務所等の廃止届出書と、都道府県への申告です。
給与支払事務所等の廃止届出書(2026年から個人も別途必要)
従業員などに給与を払っていた人は、2026年から手続きが1つ増えました。改正前の所得税法230条には「その事実につき前条の届出書を提出すべき場合を除き」という一文がありました。
このため改正前は、廃業届を出す個人事業主はこの届出書を出す必要がありませんでした。令和5年法律第3号でこの一文が削られ、2026年1月1日以後の廃止から、廃業届とは別に提出が必要です(附則第10条)。
期限は廃止の日から1か月以内、提出先は給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署です。書面の持参・送付のほか、e-Taxでも出せます。
所得税の青色申告の取りやめ届出書
青色申告の承認を受けていた人が青色申告をやめるときは、この届出書を出します。期限は、青色申告を取りやめようとする年分の所得税の確定申告期限です(所得税法151条1項・国税庁A1-9)。
なお所得税法151条2項により、事業の全部を廃止した場合は、廃止した年の翌年分以後の青色申告の承認は効力を失います。そのうえで国税庁は、廃業して青色申告をやめる人にこの届出書の提出を案内しています。廃業届と同時に出せば出し忘れがありません。
消費税の事業廃止届出書
消費税の課税事業者が事業を廃止したときは、「事業廃止届出書」を速やかに出します(消費税法57条1項3号・国税庁D1-14)。インボイス発行事業者が廃業する場合も、登録取消しの届出書ではなく事業廃止届出書を出します。
事業廃止届出書を出すと、簡易課税制度選択不適用届出書などの提出もあったものと扱われます。国税庁の案内では、対象は「廃止する事業のほかに課税売上げに当たる所得(不動産所得等)のない人」です。店舗の賃貸収入などが残る人は、税務署に確認してください。
都道府県への事業廃止の申告と、個人事業税の申告
都道府県には、性質の違う2つの手続きがあります。1つは事業をやめたことを届け出る「事業開始(廃止)等申告書」で、期限は都道府県の条例で決まります。東京都は廃止の日から10日以内(死亡による廃止は30日以内)です。
もう1つは個人事業税の申告です。年の途中で事業を廃止した場合は、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止は4か月以内)に、店のある都道府県へ申告します(地方税法72条の55)。対象は、事業の所得が控除額を超える納税義務者です。
東京都は、年の途中で事業を廃止した場合の個人事業税の申告は、所得税の確定申告とは別に必要と案内しています。様式と期限は都道府県ごとに違うため、店のある都道府県の税事務所のサイトで確認してください。
最後の確定申告と、廃業後に残る税金の手続き
廃業した年の分も、翌年に確定申告をします。2026年中に廃業した場合、所得税は2027年3月15日(月)、消費税の課税事業者は2027年3月31日(水)が期限です。
所得税の確定申告
所得税の確定申告期間は、翌年の2月16日から3月15日までです(所得税法120条)。新ルールでは、廃業届の期限もこの3月15日と同じ日になります。
廃業した後に、その事業に関する費用や損失が出ることがあります。所得税法63条は、こうした金額を廃業した年分またはその前年分の必要経費に算入する特例を定めています。使えるかどうかと手続きは、税理士か税務署に確認してください。
消費税の最後の申告と「みなし譲渡」
消費税の課税事業者だった人は、廃止した日の属する課税期間の消費税も申告します。個人事業者の12月31日を含む課税期間の期限は、3月31日です。
店の車両など、事業用でなくなった資産を手元に残す場合は注意が必要です。廃止した時点で家事のために消費・使用したものとみなされ、非課税取引にあたる場合を除いて、時価で消費税の課税対象になります(国税庁No.6603)。
予定納税の減額申請
税務署から予定納税の通知を受けている人は、減額を申請できる場合があります。条件は、廃業で本年分の申告納税見積額が予定納税基準額より少なくなると見込まれることです。第1期分と第2期分の減額申請は7月1日から15日まで、第2期分のみは11月1日から15日までです(国税庁A1-3)。
よくある質問
廃業届について、期限の境目と出し方で迷いやすい点を4つ答えます。
2025年12月に廃業しました。廃業届の期限は確定申告期限までですか?
いいえ。2025年12月31日以前の廃業には改正前のルールが適用され、期限は廃業日から1か月以内です(令和5年法律第3号附則第10条)。まだ出していない場合は、所轄の税務署に相談のうえ提出してください。
廃業届を出せば、青色申告は自動的に終わりますか?
所得税法151条2項により、事業の全部を廃止した場合は、廃止した年の翌年分以後の青色申告の承認は効力を失います。そのうえで国税庁は、廃業して青色申告をやめる人に「青色申告の取りやめ届出書」の提出を案内しています。廃業届と同時に出すと出し忘れがありません。
店の所在地と住所が別の税務署の管轄です。廃業届はどちらに出しますか?
納税地(通常は住所地)を所轄する税務署に出します。国税庁は、廃止する事務所・事業所の所在地が納税地と異なる場合でも、納税地を所轄する税務署長以外への提出は不要と案内しています。
郵送で出した場合、控えに受付印はもらえますか?
2025年1月から、税務署は申告書等の控えに収受日付印を押していません。切手を貼った返信用封筒を同封すると、当分の間の対応として、受け付けた日付と税務署名を記したリーフレットが返送されます。e-Taxで出した場合は、メッセージボックスの受信通知で受付日時を確認できます。
まとめ
2026年1月1日以後の廃業なら、廃業届の期限は廃業した年分の確定申告期限です。2025年12月31日以前の廃業だけが、旧ルールの1か月以内のままです。
税金の書類で期限が早いのは、都道府県への事業廃止の申告です(東京都は10日以内)。次が給与支払事務所等の廃止届出書と個人事業税の申告で、どちらも1か月以内です。廃業届と関連書類は、閉店直後にまとめて出すと漏れません。お客様へのお知らせの段取りは閉店の告知はいつから?で扱っています。
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- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 国税庁「個人事業の開業・廃業等届出書」様式(PDF)/同「書き方」(PDF)
- 国税庁「廃業する場合」
- e-Gov法令検索「所得税法」(63条・120条・151条・229条・230条)
- 衆議院「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号。第1条・附則第1条第6号・附則第10条)
- 国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
- 国税庁「A1-9 所得税の青色申告の取りやめ手続」
- 国税庁「D1-14 事業廃止届出手続」
- 国税庁 タックスアンサー「No.6603 個人事業者が事業を廃止した場合」
- 国税庁 タックスアンサー「No.6601 申告と納税」
- 国税庁「A1-3 所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」
- 国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」
- e-Gov法令検索「地方税法」(72条の55)
- 東京都主税局「個人事業税」
本ページは一般的な手続きの情報提供であり、法的・税務的助言ではありません。期限や要否は個別の状況・自治体・契約内容で異なります。個別の判断は税理士・社会保険労務士・司法書士等の専門家、または各窓口にご確認ください。